下門 清志
H22年6月1日にこの垂水でしもかどクリニックを開院し地域の根ざした透析施設として少しずつ認知されて来ました。
日本の維持透析患者は、導入患者の高齢化や長期透析患者の増加、生活習慣病(糖尿病や高血圧)による導入がH10年(1998年)に原因疾患の第一位になるや増加の一途をたどり、現在H25年時点では30万人を数えます。
その背景因子を探れば、現在の日本人の国民病と呼ばれる「肥満」「メタボリックシンドローム」「高血圧」「糖尿病」などの「生活習慣病」への対応の遅れが目立ちます。
さらに問題を複雑にしているのは、「慢性腎臓病」(CKD)が加齢と共に進み、透析導入年齢の高齢化があります。血液透析導入時にすでに心・血管系の合併症を有する事例が増えています。
血液透析を行う施設の役割は、単に「透析」を安全に行う事は、必要条件であり、合併症を顕在化させる事を予防するために、循環器科や整形外科などの他科との連携してゆく事が、今後ますます重要となって来ました。
維持透析に対する概念も、技術的進歩もここ10年で大きく変化しています。
H25年7月、日本透析医学会からは「血液透析処方ガイドライン」が発表され、「透析時間は4時間以上を推奨する」「透析前のβ2ミクログロブリンは25mg/L未満の達成を目標とする」などが初めて明記されました。
さらに発展的血液浄化法として「HPM透析器(high performance membrane dialyzer)の使用を推奨する」「血液透析濾療法(on line HDF)は低分子蛋白量の除去、炎症性サイトカインの産生減弱、生命予後の向上の期待」「1回あたり6時間以上の長時間透析や週5回以上の頻回透析」と定義され、循環動態の不安定な患者や心不全徴候を認める患者への推奨も記載されています。
当院は開院時より、「透析患者の予後向上」を目標として、患者一人一人にあった透析条件の工夫を重ねて来ました。すべての患者にHMP膜によるon line HDFを提供し、必要な患者には長時間透析、週4回透析、週5回の透析の処方を行って来ました。
現在の課題は、長期予後を達成するためには、アルブミン結合尿毒素の除去と共に「栄養改善、筋肉量の保持」が重要と考えています。
尿毒素と共に抜けてしまう栄養素、特にアミノ酸、カルニチンの問題に取り組むために、全透析監視装置に輸液ポンプを設置し、適宜アミノ酸、脂肪製剤の投与を可能にし、「透析患者のアミノ酸代謝」の臨床研究を進めています。
H25年9月に分院として「しもかど腎透析クリニック」を開院します。一番の目的は、地域の皆様へ「よりよき透析医療の開発と提供」を約束し、今後は、地域の透析医療の拠点になるべく精進してゆく所存です。
H25年9月
医療法人社団 藍蒼会
理事長 下門 清志
昭和63年 | 広島大学医学部卒業 |
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昭和63年 | 広島大学医学部附属病院 第二外科 研修医 |
平成元年 | 松山赤十字病院 一般外科・腎移植外科・麻酔科 |
平成4年 | 広島大学医学部附属病院 第二外科 医員 |
平成6年 | 広島大学医学部附属原爆医学研究所 分子病理学教室 研究生 分子生物学専攻 癌遺伝子、癌抑制遺伝子の多段階発癌研究 |
平成9年 | 厚生連尾道総合病院 消化器外科 部長 |
平成13年 | 厚生連吉田総合病院 消化器・乳腺外科・腎センター 部長 |
平成17年 | 入江病院(姫路市)人工透析・外科 |
平成18年 | 井上病院(吹田市)人工透析内科、シャント外科、乳癌検診(検診部) |
平成19年 | 加納クリニック(大阪府八尾市)院長 |
平成22年6月 | しもかどクリニック(神戸市垂水区/垂水駅前)開設 |
平成24年12月 | 医療法人社団 しもかどクリニック認可 |
平成25年9月2日 | しもかど腎透析クリニック(神戸市垂水区/上高丸)開設 |